4月の詩

2001年4月

 

写真はお向かいのM家の玄関先のラヴリーなカエルたち

BGMはタンホイザー「夕星の歌」midiサイトからのいただきもの。

壁紙は「万華鏡」より。

 

かずかぎりもしれぬ虫けらの卵にて、

春がみつちりとふくれてしまつた、

げにげに眺めみわたせば、

どこもかしこもこの類の卵にてぎつちりだ。

桜のはなをみてあれば、

桜のはなにもこの卵いちめんに透いてみえ、

やなぎの枝にももちろんなり、

たとえば蛾蝶のごときものさへ、

そのうすき羽は卵にてかたちづくられ、

それがあのやうにぴかぴかぴかぴか光るのだ。

ああ、瞳(め)にもみえざる、

このかすかな卵のかたちは楕円形にして、

それがいたるところに押しあひへしあひ、

空気中いつぱいにひろがり、

ふくらみきつたごむまりのやうにかたくなつてゐるのだ、

よくよく指のさきでつついてみたまへ、

春といふものの実体がおよそこのへんにある。

 

新潮文庫 「萩原朔太郎詩集」 河上徹太郎編 より

「春の実体」

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