2月の詩
2001年2月
私が百哩(マイル)も離れた
ライオネスへ旅立ったあのときは、
白い霜が木の小枝に降りており、
星影が私の旅路を寂しく照らしていた、──
そうだ、私が百哩も離れたライオネスへ
旅立つたあのときは。
私がライオネスへ滞在している間、
そこで何が私の身に起こるかは、
予言者に分かるはずもなく、
どんな賢い魔法使いにも分かるはずもなかったのだ、──
そうだ、私がライオネスに滞在している間、
そこで何が私の身に起こるかは。
私が憑かれたような眼差しで、
ライオネスから帰ってきたときは、
みんな訝しげな顔をして、
私の異様で底知れぬ目の輝きを凝視した、──
そうだ、私が憑かれたような眼差しで、
ライオネスから帰ってきたときは!
岩波文庫 「イギリス名詩選」 より
トマス・ハーディ
「ライオネスへの旅立ち」
ライオネス(リオネス)はアーサー王伝説のトリスタンの生国。コーンウォールの果ての海に沈んだと伝えられる。ここでライオネスと呼ばれるのはコーンウォールのことである。この地で彼は後に妻となったエマと出会った。出会いの年に書かれた詩と言われるが、発表されたのは妻の死後であった。 |
写真はコーンウォール、セント・マイケルズ・マウントから本土のマラザイアンを望む。