11月の詩
2000年11月
どこかで伽羅のくゆつてゐるやうな日本の秋の
なまめかしくも清浄な一天晴れたお日和さまよ。
鳥かげさへ縦横にあたたかい十一月の消息をちらつかせ、
思ひがけない大きなドンといつしよに、
一斉に叫をあげる遠い田舎の工場の汽笛が
ひとしきり
空に無邪気な喜の輪をゑがいてゐる。
高村光太郎詩集 「落ち葉を浴びて立つ」 より
部分 冒頭の7節まで
新潮文庫